事業のご案内
国際相互理解促進事業報告

2013.5.8

※北海道新聞2013年5月1日付朝刊コラム「観測気流」に大幅に加筆しました。

サハリン州が見せる「本気度」


 安倍晋三首相のロシア訪問を前にした4月24日、サハリン州が東京でPRイベント「サハリン 経済・投資ポテンシャル ビジネスフォーラム」を開いた。筆者も参加してきたので、会場の様子と印象を記しておきたい。

 

 一言で言えば、ロシアの地方政府のイベントとは思えないような豪華なフォーラムだった。

 

 開催告知のパンフレットに、このイベントのためだけにつくられた特製ロゴマークが載っているのを見た時点で、ずいぶん凝ってるな、という印象を持っていた。

 

 会場は東京タワー近くにあるホテル「ザ・プリンス パークタワー東京」の地下大ホール。当日会場に入ると、州の象徴である帆船をかたどった大型オブジェとともに特製ステージが目に飛び込んできた。300人分以上と思われる座席は、日露双方の参加者で大方埋まっている。首脳会談の直前というタイミングも手伝い、後方には10台前後のテレビカメラが並んでいる。会場正面の壁には左右に巨大スクリーンが備え付けられ、会スタートの午前11時をまわると軽快な音楽をバックに州のPR映像が流れ出した。

 

 DSC_0045

 

 

 ロシアの地方政府が東京でプレゼンすること自体は珍しくないが、普通、参加者は数十人規模だ。会場も大使館や、ホテル内でも一般的な大会議室であることが多い。サハリンのイベントは、それとは明らかに違っていた。

 

 午前のメーンとして登壇したアレクサンドル・ホロシャビン知事は、この言葉でスピーチを始めた。「今日は特別な日です。サハリン州が、40年以上にわたる日本との交流史の中で、初めて日本の首都でイベントを開くからです」。

 

 ご存じの方も多いと思うが、サハリン州は3年半前にも東京での投資説明会開催を計画していた。だが、北方領土問題が原因で、日本総領事館が訪問団の一部に訪日ビザ発行を認めず、イベントそのものが中止になった経緯がある。そうした意味でも今回は満を持しての開催だったと言えるだろう。

 

 知事は水産、医療など多くの分野に言及したが、持ち時間の半分をエネルギー関連の話題に割き、中でも、ロシアから日本への送電システム「エネルギー・ブリッジ」を架ける構想を強調した。

 

 プログラムは、午前が全体会合、午後は4つの分科会という2部構成だった。分科会は「エネルギーと輸送インフラ」「水産加工・林業」「観光」「地域間交流」に分かれ、同時進行した。筆者が出席したエネルギー分科会では、送電プロジェクトの当事者であるRAO東電力システム社のトルストグゾフ会長が計画を説明。また、サハリンの石炭産業や風力発電の現状、またサハリンと大陸を鉄道で結ぶ計画など、日本では情報が少ない分野のプレゼンが続き、100人を超える日本人参加者が耳を傾けた。

 

 全体会合、分科会を通して30人以上のロシア人がプレゼンを披露したが、スクリーンに映る資料のほとんどが日本語化されていたのも印象的だった。筆者の経験では、こうした場ではどちらかといえば英語資料が使われることの方が多い。人口の割に日本語通訳・翻訳者の層が厚いサハリンならではだ。

 資料は紙では配られず、USBメモリで、原則パワーポイントファイルで全参加者に配られた。メモリには今回のイベントロゴがしっかり貼ってあり、やはりロゴの入った特製の手提げ袋に入れられていて、おまけにペンとノートもついてくる。

 

 ちなみに午前・午後をつなぐ昼食は、立食形式で無料だった。ホロシャビン知事主催の夕食会に至っては、結婚式の披露宴さながらに着席式の丸テーブルが20脚以上並び、ロシア人歌手グループの歌声が響く中でコース料理が振る舞われた。

 

 DSC_0390

 

 国際的な資源開発事業「サハリン・プロジェクト」が稼働するサハリン州は、ロシアでも指折りの経済発展地域である。宗谷岬からわずか50㌔弱。プーチン大統領が極東での日露経済協力を強調する中で、対日アピールに力を入れてきたのは明らかだった。

 

 少々、演出過剰感を覚えないでもない。おそらく参加していた日本人は今のサハリンについて一定の知識を持つ人も多く、なにもここまでやらなくても経済発展の事実ぐらいわかってるよ、と感じた人も多かっただろう。

 

 しかしその一方で、あまり関心のない日本人からは、いまだ物不足の貧しい国として見られがちなロシアである。首脳会談前、中央メディアも集まる東京でのプレゼンとあっては、やり過ぎぐらいのアピールも、立派な作戦だったのかもしれない。

(了)


▲このページの先頭へ