事業報告

(2014.06.13)

GCC諸国と日本・北海道の経済交流促進フォーラム in  ルスツ

2014年6月13日(金) ルスツリゾート

ハイエック調査研究部 森内 壮夫

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小雨降りしきる留寿都村の会場

 

 

 中東の湾岸協議会(GCC)諸国と道との経済交流促進フォーラムが6月13日(金)ルスツリゾート(留寿都村)で行われた。主催が経済産業省、その他北海道と湾岸協力理事会駐日大使北海道ご来訪歓迎実行委員会が協力して開催されたもので、GCC加盟6カ国のうちの4カ国の駐日大使が出席した。一行は14日(土)は地元留寿都でアスパラ収穫を体験し、15日(日)は世界に先駆け導入された陽子線がん治療装置の視察のため北海道大学を訪問した。

 

 そもそも、湾岸協議会(GCC)とは何か?中東の地域協力機構で同地域から原油輸入の7~8割を頼る日本にとっては、大切なパートナーであることは間違いない。安倍晋三首相も昨年の5月と8月、そして今年の1月に中東のGCC加盟国を含む中東訪問を繰り返し、エネルギーの生命線とも云えるGCC各国と日本との国交の重要性を印象付けている。

 

 以下、箇条書きに湾岸協議会概要について触れる。

 

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〇正式名称はThe Cooperation Council for the Arab States of the Gulfで「GCC:読み方はジーシーシー」は略称「Gulf Cooperation Council」の頭字語

〇1981年設立。アラビア半島の産油国から成る地域協力機構。通貨統合や経済連携など中東版EUを目指している。

〇加盟国はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6カ国。中東の親米国が顔を揃える。本部をサウジアラビアのリヤドに置く。

〇設立の背景にイラン革命、イラン・イラク戦争などのペルシャ湾岸地域の緊張があり、安全保障の観点から、近隣加盟国の結びつきを強める必要があったとされる。

〇憲章では「湾岸協力会議は、(イスラム教を基礎とした)過去の伝統を引き継ぎ、発展させ、制度化したものであると同時に、一方で湾岸地域における安全保障および経済発展を目指すものである」と記載され、イスラム教が結束の基礎にあることが明記されてある点で、特徴的。

〇対日本との貿易額(GCC6カ国合計、2012年:財務省貿易統計)

・輸出 約12兆6,167億円(ほぼ100%エネルギー関連)

・輸入 約1兆9,930億円

・日系企業数:452社(2011年)

・在留邦人数:5,636人(2011年)

〇日本とは小泉政権時に物品とサービス貿易の分野を対象としたFTA交渉を始め、現在も非公式の中間会合を重ねている。昨年湾岸協力会議(GCC)・シンガポール自由貿易協定が中東域外では初めて発効。

 

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 北海道経済産業局が旗振り役となり、昨年3月にカタール国とアラブ首長国連邦にて道産食材等を売り込む「北海道フェア」、7月にはサウジアラビア大使館にて道産食材を使用した「イフタールパーティー」、11月にはサウジアラビアでの「北海道フェア」、今年2月には道内食関連企業のトップ40名が参加した大規模なビジネスミッションがドバイ・カタールに派遣されるなど、ここ1~2年北海道では官民による中東諸国へ食や観光を売り込む取り組みが活発化している。今年10月からドバイのマーケットに設置する「JAPANブース」の出品商材等の募集・選定作業が進行中で、「日本・北海道ブランド」の中東売り込みは過熱していると言えよう。

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パネルディスカッション

 

 当日は第1部でパネルディスカッションが行われ、第2部で道産食材使用のムスリムに配慮した食事を供したレセプションが開催された。第1部のモデレーターは経済産業省北海道経済産業局長増山壽一氏が務め、パネリストとして、アラブ首長国連邦サイード・アリ・ユーセフ・アルノウァイス特命全権大使、バーレーン王国ハリール・ビン・イブラヒーム・ハッサン特命全権大使、クウェート国アブドル・ラフマーン・フムード・アルオタイビ特命全権大使、カタール国ユセフ・モハメド・ビラール特命全権大使が臨席。

 

 パネリストとして参加した国際協力銀行(JBIC)代表取締役専務取締役前田匡史氏は、中東通として知られ、増山局長のモデレーションに解説を加えるコメンテーター的な役割を担っていた。

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GCC4大使が地方に一同に会するのは日本初

 

1)カタール国ユセフ・モハメド・ビラール特命全権大使

 「カタールからの原油輸入量は日本の原油輸入全体の12%を占め、LNGも同様12%を占めている。日本はカタールにとって重要なパートナー。特にLNGについてはロシア、イランに次ぐ埋蔵量をほこり、生産量は世界一と大きな産業に育っている。日本とはすべての分野においてパートナーとして手を組みたいが、とりわけ進んだテクノロジーの分野で情報を共有していきたい。

 

 北海道は自然資源が豊かで、素晴らしい環境。我々の国民を受け入れるために、私にできることがあればお手伝いをしたい。カタールから多くの旅行者が北海道を訪れることを願っている」

 

 

2)クウェート国アブドル・ラフマーン・フムード・アルオタイビ特命全権大使

 「1961年の独立以降クウェートと日本は友好的な関係を築いており、我が国の産油量の2割は日本に向けられ、それは日本の原油総輸入量の7%に相当する。クウェートは日本との関係をより深化させることを望んでおり、特に技術や教育の分野の連携を望んでいる。より多くのクウェートの学生が日本の大学に留学し、日本の先進的な教育を受けてほしいと願う。

 

 北海道はとても美しい地域。植生や地形が素晴らしい。また、すべてが秩序だって整然としていることにも驚かされる。ムスリムの受入は難しいものではない。ハラールや豚肉の扱いなども、難しく考える必要はない。それがクウェートからの旅行者を阻害する大きな要因とはならない。オリンピックの開催をにらみ、日本でも様々な標記が英語併記になるだけで、ムスリムにとっての食べ物の問題は大きく改善され、日本はより住みやすい国になる」

 

 

前田氏コメント

 「国内産業の9割以上が石油関連が占めているため、代替産業の模索が急務。また、クウェートには「日の丸油田」があり日本の自主開発油田の半分以上を占める採掘を行ってきた。日の丸油田はJBICの融資も受けている。現在は採掘ではなく原油購入・販売を主な業務としている」

 

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左から留寿都リゾート加森社長、前田匡史氏、ビラール・カタール大使、オタイビ・クウェート大使、松島みどり経済産業副大臣、ノワィスUAE大使、ハッサン・バーレーン大使、増山壽一道経産局長

 

 

3)バーレーン王国ハリール・ビン・イブラヒーム・ハッサン特命全権大使

 「バーレーンという国名は「2つの海」を意味し、島に湧く淡水と島を囲む海水を意味する。バーレーンは日本同様島国、中東の金融の中心を目指して、積極的に多国籍企業の誘致を行っている。観光にも力を入れていいるので、是非北海道から多くの観光客が訪問してくれることを願っている」

 

前田氏コメント

 「バーレーンは33の島からなる島国で、人口130万人、国の面積も760平方㌔と小さい。原油の生産が主産業だが、埋蔵量も少なく原油に頼らない産業の育成が急務。中東ではドバイ、カタールに次ぐ金融の中心として、主に、橋一本で繋がっているサウジアラビアとの結びつきが強い国」

 

4)アラブ首長国連邦サイード・アリ・ユーセフ・アルノウァイス特命全権大使

 「GCC6カ国は、構成国それぞれは小さな国かもしれないが集まると経済的なインパクトは大きい。UAEの原油生産の44%が日本向けで、日本の原油総輸入量の23%に相当。対日本のLNGの輸出も多い。日本からの進出企業も300以上あり、日本との繋がりは深い。現在UAEから来日している52人の学生が日本の大学で学んでおり、本国のUAEの若者も日本へ強い憧憬の念を抱いている。UAE人子弟のアブダビ日本人学校へのUAE人子弟の受け入れも盛んで、日本語を流ちょうに話すUAEの子供も増えている」

 

 

前田氏コメント

 「UAEは化石燃料のエネルギー産業中心が90%以上を占め、圧倒的に化石燃料エネルギーに依存する経済構造を変えるべく、原油などに頼らない産業構造転換にいち早く着手した。たとえば、アルミニウム精製を始めた。そのために、アフリカ諸国に対し戦略的に投資し、ボーキサイトを調達できる体制を整えた。アルミニウム精製は膨大な電力を消費するため、原子力発電所の設置を推進し効率的な電力供給の実現を果たした。化石燃料の自国消費を抑えることで、輸出に回し外貨を稼ぐ意図がある。原油可採年数が100年を切り、更なる産業の多角化に挑んでいる」

 

前田氏総括コメント

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コメントするJBIC前田専務

 「日本とGCC諸国の関係は、エネルギーの調達先としての単なるカスタマーから互恵的なパートナーへ変貌を遂げようとしている。お互いの友好な関係を築くためには、相手国から石油を購入するだけではなく、相手国を良く知る必要がある。GCC諸国の富裕層は夏が暑いのでと避暑に行く。行先を聞いて驚いたが、マレーシアやインドネシアに行くという。中東に比べれば涼しいかもしれないが、日本に比べると桁違いに暑い。なぜそのような暑い場所を避暑に選ぶかと言えば、マレーシアやインドネシアはムスリムの同朋が多くいる国で、ムスリムを受け入れるためのサービスが充実しているから。ハラールの問題もクリアされている。日本が彼らを受け入れるためには、やはり最低限の体制を整えホスピタリティを示すことが重要。

 

 イスラーム教をひも解くと、なぜ豚がハラーム(禁忌)なのか、アルコールがダメなのか非常にプラクティカルな観点から分析されていることに驚かされる。豚肉は処理が難しく、食肉加工技術が進んでいない預言者モハメットが生きていた時代は、食中毒を起こしやすい食べ物だった。高利貸しも禁止されているが、それも働かずして、お金を得ることはアラーの教えに反するから。イスラームをミステリアスなものとして捉えるのではなく、知識としてきちんと整理すること。それがイスラーム圏の方々が来た時に気持ち良く接することができる、備えとなる。

 

 北海道は積極的に売り込む必要がある。同じムスリムの海外他地域からの入込旅行客も増え、ある程度「北海道ブランド」が通用する地域も出てきている。今回GCCとの縁ができたことを大切にし、売り込む。まずは北海道のいいところ、たとえば高品質の農作物、新鮮な魚介類、世界一の雪質などをパッケージ化して売り込み、効率よくブランド化ができればインバウンドも期待できる」

 

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挨拶する松島みどり経産副大臣

 

 松島みどり経済産業副大臣は「今日は歴史的な一日。なぜならば日本の他地域に先駆けて、北海道という自治体とGCC諸国が直接対話し、繋がった日だから。北海道は日本人にとってもロマンを感じさせる場所。ヨーロッパやカナダにも負けない品質を誇るパウダースノーを有し、食べ物もおいしい。GCCには“超”が付くほどの富裕者層がいて、英国の百貨店ハロッズの高級品を買い漁る。その購買欲を日本に仕向け、是非日本・北海道でお金を使っていただきたい」と挨拶した。

 

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アラビア語で挨拶し、大使を喜ばせた高橋知事

 

 

 レセプションでは高橋はるみ北海道知事が「北海道でもムスリムの方々がいらしても十分なおもてなしができるように準備をしています。実際アセアン諸国からのイスラーム来道観光客も増加しています。加森観光さんをはじめ、食事の面でもムスリムに配慮できる施設も増えてきました。GCC諸国の皆さまとますます強い結びき、たくさんの皆さまをお迎えしたいと思っています」と挨拶。各大使は道産食材をふんだんに使用した料理に舌鼓を打ちながら「OISHII」を連発していた。クウェート大使夫人は函館の水産加工会社「かくまん」のいかめしを手にし、「このような食べ物は初めて見ました。面白いですね」と興味を示していた。

 

「いかめし」を手にする、大使夫人

いかめしを手にする、クウェート大使夫人

 

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記録写真

 

 

 

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高橋知事から留寿都村に住む陶芸家、加地学さんの陶器が各大使に贈られた

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大使と湾岸協力理事会駐日大使北海道ご来訪歓迎実行委員会との記念撮影

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新鮮な道産食材が花を添えた

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道産食品会社の売り込みも盛んだった

 

 

 

 

 

 

 


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