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国際相互理解促進事業報告

2012.12.27

ロシア極東ハバロフスクでの「北海道 寒冷地技術セミナー・商談会」(2012年10月17日)

 

 北海道は2012年10月17日、ロシア極東の中核市ハバロフスクにて、道内寒冷地技術・製品についてのセミナー・商談会を開催した。同市で道がビジネス関連イベントを開くのは初めて。対ロシアではサハリン島(サハリン州)との交流が長く続いているが、これと並行して、成長著しい大陸部との結びつきも深める狙いがある。事業は社団法人北海道未来総合研究所および公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)が受託。以下、商談会当日の様子を報告する。(文責:HIECC研究員・吉村)

 

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 市内中心部のオフィスビル2階にある、ハバロフスク日本センターの大会議室。朝から降り続く雨にもかかわらず、北海道のセミナー開始時刻の午前10時が近づくにつれ、コート姿のロシア人参加者が続々と入ってきた。

 

 集まったのは主にハバロフスク地方の建設業界、行政、経済団体の関係者で、現地の地方政府などによる事前PRが有効に働いた。用意していた60席が参加者でびっしり埋まり、定刻通りにセミナーが始まった。

 

 冒頭に北海道側から高原陽二副知事、喜多龍一道議会議長が挨拶し、日露交流の意義などを説明した。ロシア側からは極東商工会議所のヴォストリコフ会頭がスピーチし、「当地と気候の似た北海道の技術プレゼンテーションは皆様にとって有意義」と強調した。

 

 セミナーは、北海道の概要説明から始まった。位置や冬季の状況、住宅・道路の実態について、写真を多用したプロジェクター資料で解説。必ずしも北海道に詳しいとは言えないハバロフスク地方の人々に、生活環境の共通性と違いを伝えた。

 

 メーンは、道内企業が自社の技術や商品を売り込む直接のプレゼンテーションだ。登壇したのは次の8社(代理発表含む)。ロシア語に訳されたスライド資料を使い、通訳者を通して各々10分前後のプレゼンを展開した。

 

・青井商店(旭川市):作業用手袋各種

・ノースプラン(札幌市):防風防雪板

・りけん(札幌市):水道下水用・保温二重管

・北友(札幌市):金属サイディング(外壁)

・三協立山/三協アルミ社北海道支店(札幌市):折板カーポート屋根

・北海道ゴム工業所(由仁町):融雪マット

・オノデラ(旭川市):建設機械用アタッチメント

・三井化学産資札幌支店(札幌市):給水給湯配管システム

 

 どの商品・技術もロシアの厳寒期にも対応できることをうたっており、熱心にメモを取りながら聞き入るロシア人参加者の姿も見られた。

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 会場は人で埋まり、地元マスコミ3社がテレビカメラを持ち込む盛況だったが、道はテレビCMなど経費が高くつくマス広告は出していない。現地での集客は、ハバロフスク地方政府や極東商工会議所、日本センターの全面協力による部分が大きかったと言える。

 

 特にハバロ地方政府と道は、サハリンや札幌で毎年開く経済協力会議を通して長く接点があったため、今回のイベントでも管轄地域の建設業者に政府が直接PRするという協力を得られた。また、ロシアが夏休みシーズンに入る前に道側の事務方が現地に赴き、経済団体や企業を訪ねて協力、参加を働きかけたことも背景となったと見られる。

 

 プレゼンは正午過ぎに終了。昼休みを挟んで、午後2時から企業ごとの商談会に入った。2部屋に分かれ、1テーブル1社でそれぞれに通訳者がつく。事前申し込みの他にも飛び込みの面談希望者が相次ぎ、時計の針が4時を回るまで会は続いた。参加したロシア企業は22社、商談会実施件数は46件だった。

 

 昼の時点で参加者にアンケートをとったところ、21社から回答を得られた。セミナーの感想として、「大変有益だった」「有益だった」との回答が9割を占めた。理由には「コスト削減につながる技術が紹介された」「日本企業と知り合う契機になった」などの言葉が並んだ。

 

 日本(北海道)企業との協力関係を築く希望があるかどうか尋ねたところ、「ある」が95%で、道内企業に向けられる期待の高さが明らかとなっている。関係を築きたい理由としては「高品質だから」「故障しにくいから」「情報交換をしたいから」などの回答が目立った。

 

 地方自治体が外国で催すPRイベントでよく見られるのは、域内産品を幅広く募るために農産品もあれば雑貨も工業品も、といった具合でテーマが定まらず、現地業者の関心を集めきれない事態だ。しかし今回のセミナー・商談会は、北海道から売り込む商品を「建設関連の寒冷地技術」に絞り込み、建設業界の実務者を招いた。

 

 ハバロフスクではソビエト時代の建築物の老朽化が進み、市内は今まさに住宅建築ラッシュのさなかにある。冬季はマイナス30度を下回るこの地方は、北海道の寒冷地技術を生かせる可能性がある市場。今回の道側のイベント事務局は、「ハバロフスクへの売り込みを戦略的にとらえて、継続的に取り組むことが重要になりそうだ」と話している。


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